中耳炎
耳は外耳、中耳、内耳と3つにわかれており、中耳とは鼓膜の奥にある空間です。
中耳炎とは、ウイルスや細菌が鼻の奥と中耳とをつなぐ耳管という管を通って中耳に入り、炎症が起きている状態です。
中耳炎の種類
急性中耳炎
急性中耳炎とは5~6歳までのお子さんに多い病気の一つです。 お子さんの耳管は短く、太く、角度がなく水平に近いため、鼻からウイルスや細菌が入りやすくなっているのです。風邪をひくと鼻水がでます。この鼻水の中にはたくさんのウイルスや細菌が含まれており、鼻をすすったり、放っておくとウイルスや細菌が耳管を通って中耳に入り急性中耳炎になります。
【症状】
- 耳の痛み
- 耳が詰まった感じ
- 耳だれ
小さいお子さんは耳の痛みを伝えることができないため、耳をよく触ったり、泣き出したり、不機嫌になったりします。
【治療】
細菌感染が強く疑われる場合には抗菌剤を使用します。また、鼻水をかんで出さずに溜まったままにしていると治りが悪くなりますので、鼻をよくかむようにしてください。
鼻をかめないお子さんの場合、こまめな鼻水の吸引をお勧めします。
耳の痛みがなくなってお子さんが何も訴えなくなっても、中耳炎は完治していないことが多く、中耳に膿や水がたまっていることがあります。完治したといわれるまで、通院して頂くことをお勧めします。
滲出性中耳炎
滲出性中耳炎とは、中耳に滲出液という液体が溜まり、音が伝わりにくくなる中耳炎です。鼻水がながびいたり、鼻すすり癖があったりするお子さんに多く、急性中耳炎が完治せず滲出性中耳炎へ移行することもあります。
【症状】
- 難聴(聴こえにくい)
- 耳が詰まった感じ
- 耳鳴り
急性中耳炎と違い、痛みを訴えることはまれです。そのため小さなお子さんの場合、自分から訴えることは少なく、テレビの音を大きくしたり、呼びかけても返事をしない、振り向かないなどが滲出性中耳炎のサインになります。
【治療】
治療には、こまめな鼻水の吸引、鼻水止めの薬(抗アレルギー剤、漢方薬)、去痰薬(粘膜改善薬)などのお薬を服用していただきます。
これらの治療で2ヵ月以内に7割がたのお子さんが改善しますが、そこで治らない3割のお子さんには、聞こえの改善と、慢性中耳炎への移行を防ぐために、鼓膜切開術や鼓膜チューブ挿入術をお勧めします。
頭を動かさないように十分に固定できる小さいお子さんや、手術について理解でき、数十秒から数分間じっと座っていることができるお兄ちゃん・お姉ちゃんは、当院で耳に麻酔のお薬を入れて局所麻酔下での手術をすることも可能です。
どうしても頭を動かしてしまうお子さんには、総合病院を紹介させて頂き、全身麻酔下での手術をお願いすることもあります。
特にまだまだ抵抗力の弱い小さなお子さんや、保育園などで集団生活を送っているお子さんは、繰り返したり長期化することがあり、言葉を獲得する大切な時期に中耳炎になり放置していると、なんとなく聞こえにくい状態が続き言葉の獲得に悪影響を及ぼす危険があります。また、中耳炎を放置していることで将来に大きな手術が必要になる慢性中耳炎へ移行する危険もあります。
根気強く治療を続けていくことを切にお願いします。
外耳炎
耳の穴の入り口から鼓膜までの筒状の部分を外耳道といいます。その外耳道に炎症が生じた状態を外耳炎といいます。
外耳道の皮膚を指先や耳かきなどで傷つけてしまい、そこから細菌や真菌(カビ)が感染して発症するケースがよく見受けられます。気になってさらに耳掃除をして事態を悪化させてしまうという悪循環に陥りがちです。
【症状】
- 耳のかゆみや痛み
- においを伴う耳だれが出る
外耳道の広範囲が炎症を起こす、『びまん性外耳炎』が起こると耳のつまり感や聴力の低下を招くことがあります。また、耳の毛穴におできができる『限局性外耳炎』もあり、ある一点が強く痛むことがあります。
【治療】
まず耳掃除で耳内をきれいにし、点耳薬投与、軟膏塗布などを行います。炎症が強く、痛みが激しい場合は、抗菌剤を内服していただくこともあります。痛みやかゆみをおさえて、耳を触らないようにすることが最も大切です。
耳あか(耳垢栓塞)
耳あかとは、はがれた表皮や分泌物、ホコリなどが混ざり合ったものです。
耳垢栓塞とは耳あかが耳の穴を塞いでいる状態です。たくさん溜まっていると難聴が生じたり、小さい耳あかが鼓膜にくっついているだけで耳のつまり感やガサガサいう耳鳴りが生じることがあります。
耳あかは、耳の入口から1cmほどの部分でしか作られませんが、ご自身での耳掃除によって耳あかを奥に押し込んだ結果、耳垢栓塞になってしまうことが大半です。また、耳に水が入って耳あかつまり感や聞こえにくさが強くなることもあります。
【治療】
耳の中を拡大鏡で見ながら、吸引管や鉗子を用いて、丁寧に耳あかを取り除きます。
耳あかが固くてなかなか取れない場合には、柔らかくふやかす点耳薬を行ってから取ることもあります。痛みが強くなかなか取れないような場合は、数回に分けて除去することもあります。
※耳掃除について
外耳道には自浄作用があり、耳あかは自然に耳の外へ運び出されるようにできていますので、頻繁に耳掃除をする必要はありません。
特にお子様の耳を無理に掃除するのは危険です。痛がったり、嫌がる場合は無理せず止めましょう。耳あかが気になる場合は、遠慮せず耳鼻科を受診して下さい。
耳鳴り(みみなり)
日本人の4人に1人は慢性的な耳鳴りに悩んでおり、特にご高齢の方では多く発生します。健康な人でも、今まで一度も耳鳴を感じたことがないという人はおそらくいないと思います。
耳鳴を訴える患者さんの多くは難聴を伴っており、耳鳴と難聴は表裏一体のものと考えてもよいかと思います。
ほとんどの耳鳴は放置しておいても心配はないのですが、耳鳴のなかには重大な病気の初発症状であったり、耳鳴が大きくて日常生活に支障を来したりする場合があります。この場合には、受診して頂き、適切な検査や治療を受ける必要があります。
【診断・検査】
- 問診および外耳・鼓膜の診察を行います。
- 難聴の有無や程度を検査します。(標準純音聴力検査)
- 耳鳴り検査として耳鳴りの周波数や大きさを調べます。
【治療】
耳鳴りは、ご自身に合った治療法をしっかりと行うことが耳鳴りの改善につながります。なぜ耳鳴りに悩まされるのかを、しっかりと理解することで不安は軽減され、対処できるようになります。
薬物療法
耳鳴りによるつらい症状(不安・イライラ・睡眠障害・うつなど)を緩和させる治療法です。
原因によりいくつかの薬(漢方薬、抗不安薬、睡眠薬など)を使用します。
音響療法
音響療法は、耳鳴りが気にならない状態にすることを目的とした治療法です。
ご家庭内でも音の豊富な環境を作り出し、耳鳴りを慣らしていくことが大切です。音がない環境では、人工の治療音を発生させる機器(サウンドジェネレーター)を使用することで治療可能です。また、難聴のある方は、補聴器で音を十分に聞き取れる環境を整えることが大切です。